逆薔薇の騎士の巻

 ようやく気温も暖かになってきました。3月下旬のことですが,現場百遍魂や真相解明までの道のりが混みいった事件の安請け合い等のため,毎度のごとく長距離移動をしていると,道中,平日とはいえ少年少女が楽しげに闊歩している姿をよく見かけしました。学校も春休み中,卒業または学年修了ということでプレッシャーから解放されつつ春を満喫されていたということでしょう。 そして,4月,入学,進級も済ませ,心機一転というところでしょうか。ま,昔の当方のように「これから浪人生活だなぁ。」等というパターンもあり,そのような方には特に大きな幸運が訪れんことを。 子どもの進級,入学のような別れや出会いは,大人の世界では転勤,転職等があります。子どもには無く大人特有の「別れ」といえば,何と言っても「離婚」でしょうか。

 離婚は,昨今の社会情勢や家族関係の変化により,昭和45年の約9万6000件から増え続け,平成に入ってからさらに増加傾向,そして,平成14年の約29万件をピークにその後は減少済みということです。これは,「離婚」という単語をインターネットの検索に掛けて出た厚生労働省のホームページから得た記録です。 ところで,この「離婚」いう単語をインターネットの検索欄に打ち込んだところ,文字変換予測欄に「離婚弁護士」なる単語が出てきました。実際,離婚を専門分野と謳っている先生に会ったことがありますが…。rikon_01

 離婚については,それこそ,他の弁護士さんのホームページ等で,①手続として「夫婦間での緑色の離婚届作成による協議離婚⇒それがだめなら家庭裁判所へ離婚調停を申立てての調停離婚(極まれに審判離婚)⇒それがだめなら家庭裁判所へ離婚訴訟提起しての裁判離婚」という段階を踏むこと,②相手の意向に構わず裁判で離婚を認めてもらう事由として,「民法第770条第1項にある不貞行為,悪意の遺棄,生死3年以上不明,回復の見込みがない強度の精神病,さらに同条第2項として『その他婚姻を継続し難い重大な事由の存在』」が必要であることの詳しい説明が溢れています。 上述のとおり,一時期まで離婚が増え続けた影響なのか,当方は,特に離婚事件を専門的に取り扱っているというわけでもないのに,離婚事件の法律相談を多数受けてさらに事件を受任しています。1件終わった(たいがいが離婚になった。)と思ったら,直後に2件ほど見積書作成といった感じで,常時10件前後の離婚事案が継続しています。

 離婚事案の場合,法律相談段階で,相談者と相手方配偶者のどちらにどのような落ち度があるのかを探求していくことになりますが,よくあるパターンは,浮気(不貞行為),家庭内暴力(性格的な問題や酒乱癖等),経済苦(ギャンブル等の浪費,就労しない等)の3部門です。

 さて,一通り法律相談を終えてアラマシの概略を確認した後,離婚達成へ向けての受任となるのですが,その際,当方は依頼人に,相手方がこの3部門の三冠王でもない場合,2点ほど確認しています。 その一つ目は,「条件次第で復縁の余地はないのか。」ということです。これは,こちら側の分が悪いのであれば,「相手方への謝罪やこちら側で受容可能である相手方の要求を誓約することを申出て復縁をお願いする。」ということになり,相手方側に問題があるのであれば,「相手方へこちら側が希望する条件を誓約するという条件で復縁を考えてもよい打診する。」ということになります。
 もう一つは,相手方が離婚原因を作った有責者である場合,離婚と付随して慰謝料を請求することになるのですが,その請求にあたっては,裁判段階で認められる判例に留意することです。判例に照らして,慰謝料請求の度が過ぎていると裁判官に判断される危険等のリスクを説明すると,大抵ご納得いただいています。clm_rikon01

 この2点の確認の内,前者の復縁の余地確認は,弁護士としているのは珍しい方だと自分では思っています。自分で思っている等という話だと,それこそ「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中…」等と言われる時代なので,とある調停手続で,エライ人からそのような確認をする弁護士は珍しいのではないかと言われたとも付言しておきます。それが褒められたのか呆れられたのかは…。
  それはともかく,なぜこのような確認をするかというと,それは離婚という事案の特殊性と,離婚させた方が儲かる可能性が高いという事情が理由です。 離婚事案の場合,当事者の精神的荷重は,それこそ有責側であれば自業自得の面があるとはいえ,代理人に付いている弁護士でさえ想像が及ばない程甚大であることが多く,それこそ実際に離婚を体験してみないと分からない程でしょう。そのような精神的荷重下において,離婚への決意がどれほど揺るぎないかは不確定であり,また時間の経過により迷うことがあります。

 また,事案においても,それこそ有責者が不貞,浪費,家庭内暴力の三冠王のように,当方としても「こりゃ離婚一択。」と判断せざるを得ない場合は実際には珍しく,程度の違いこそあれ双方に問題がある場合が多々あります。よくよく聞いてみると,依頼人の離婚の意思が,売り言葉に買い言葉の末の意地の張り合い,愛情裏返っての…等というパターンもあり,本心は復縁希望ということがあります。さらに,当事者だけの問題に止まらず,涙を目に溜めて不安げに左右を見回る幼い子どもがいるにも関わらず,その父母である夫婦は互いを罵り合いつつ,子どもを自分の方の味方にしようと恫喝,籠絡,誘惑に及ぶ…というのですらまだマシで,子どもを邪魔者のように押しつけ合うという地獄絵図すらあります。こういった極めて複雑な事情が絡み合う状況で,関係者の最大の不幸回避という観点からは,無論,離婚を目指すということもありますが,他方で,復縁についても留意する必要があるのではと…。

 協議離婚で話がまとまらず,調停や裁判に進んだ場合,裁判所側から,時折離婚に抑制的なニュアンスの言を受けることがあります。その理由の一部には,おそらく上述のような事情による部分があると思われます。実際,裁判所から離婚回避の余地について当事者双方に投げかけがあり,依頼人から,当方があらかじめ尋ねた復縁の余地を尋ねたこととその理由説明を思い出したという場面がありました。この時は,夫の度重なるわがままな言動や何かにつけて妻を馬鹿にする態度(特に容姿に関する侮辱)に耐えられなくなったという離婚理由だったものの,小さな子どもがいることからその子どものためを考えて大人同士の譲歩をという趣旨だったので,当方も一度じっくり考えようと相手方に提案しました。

 そして,間を置いて,妻側から夫側へ侮辱を改めること,少なくとも子どもの前で自分を馬鹿にすることは止めて欲しい等の条件により今一度離婚を思いとどまる可能性ありという打診に至りました。相手方は,妻側の離婚請求に対して棄却を求めるという答弁だったこともあり,これで終わるのかもと思いきや…ところがギッチョンで,相手方(というより相手方の代理人)が,こちらが弱気になったと捉えたのか,逆に息巻き,「離婚だ!」,「こっちは悪くないのを認めたにもかかわらず離婚訴訟を起こされた。慰謝料500万円払え!」という方向へ…。rikon_02

 この件は,結局,比較的グッドエンドになったのですが,離婚事件の場合,それこそ「離婚させる。」,「相手方から慰謝料を取る。」ということで,成功報酬が発生する仕組みの契約を弁護士はするわけで,意に沿わない復縁に持ち込まれれば事件失敗という結論になります。このことから,一度離婚で受任すれば,何が何でも離婚というベクトルへつい代理人もハマってしまうということがあるのでしょう。それだけに復縁の余地というのは,一度離婚に向けて舵取りをした後は考慮が難しいのかもしれません。

 この比較的グッドエンド事例の中身ですが,途中天気が青筋立てた裁判官様の雷鳴により,関係者の目も一転曇りがちとなり,条件付き復縁となりました。当初離婚ではなく復縁にも関わらず,その条件合意により一部成功扱いとして成功報酬をいただきホクホクとしていた当方の横で,誰かさんと誰かさんがな~かま~われ~♪……。いや,ホント色々すみません。

 昨年の今ごろは,ジュゼッペ・ヴェルディとリヒャルト・ワーグナーのアニバーサリーの年だと息巻いていました。調べれば毎年が記念日ありで,今年はリヒャルト・シュトラウスの生誕150周年。というわけで今回のコラムの題名は冒頭のとおりです。 本家「薔薇の騎士」は,グラムフォンのいわゆるカラヤン新盤の国内盤CDが手元にあるので,いつでも楽しむことができますが,どこかの劇場で実演を味わいたいものですねぇ。アルカス佐世保に来ないかしらん。