刑事事件

刑事事件は、犯罪とそれに対する刑罰を定めた法律(主に刑法)に違反した(犯罪に及んだ)と疑いがある人物(被疑者)に対して、国の警察及び検察官が捜査を行い、裁判を通じて、有罪か無罪かを定めて、有罪の場合刑罰を下す一連の手続を指します。ここでは、主に、犯罪に及んだという嫌疑を受けている「被疑者」の弁護、刑事裁判を受けることとなった「被告人」の弁護の他、便宜上、「被害者」側の支援や加害者が少年である場合の「少年事件」についても表記します。
1.被疑者弁護
(1)逮捕、勾留等身柄拘束を受けた場合:犯罪を犯した嫌疑を受けて、警察に逮捕された場合、48時間以内に、検察官へ被疑者が送致され、さらに24時間以内に、検察官が裁判所へ勾留請求をするか釈放するかを決めます。勾留請求がなされ、裁判所が勾留(逃亡や証拠隠滅等を防ぐために一定期間被疑者を拘束する処分)を認めた場合、10日間を限度に身柄拘束を受けます。この10日間の内に、刑事裁判に付されるか(起訴または公判請求と呼びます)、または、釈放されるかが決まります。ただし、さらにもう10日間を限度として(非常に例外的ですが、内乱罪等の特別な事件の場合、最大25日間の勾留になることがあります。)勾留期間が延長されることがあります。それから、公判請求、釈放以外に、略式手続という罰金を納めることで公判請求を免れる制度もあります。
⇒この被疑者段階で、弁護人を付することができます。被疑者弁護人は、「警察署の留置施設にいる被疑者との接見」、「被疑者に対する捜査機関の取調状況の確認、被疑者への助言」、「被疑者が嫌疑を認めている場合、被害者との示談や被害弁償の交渉」、「被疑者が嫌疑を認めていない場合、被疑者の言い分を踏まえての捜査機関側との交渉、被疑者の言い分の裏付けとなる資料等探索」、「被疑者の家族との協議」等を行います。
(2)逮捕、勾留等身柄拘束を受けることなく犯罪の嫌疑についての取調べを受ける場合(在宅事件):犯罪の嫌疑を受けた場合、必ず逮捕や勾留等の身柄拘束を受けるとは限りません。自宅での日常生活や仕事を続けながら、捜査機関の出頭要請に応じて取調べを受けることもあります。
⇒この段階でも、弁護人を付けることは可能です。この場合、「被疑者との協議、被疑者の言い分確認」、「被疑者が嫌疑を認めている場合、被害者との示談や被害弁償との交渉、検察官との身柄拘束抑止の交渉」、「被疑者が嫌疑を認めていない場合、被疑者の言い分を踏まえての捜査機関側との交渉、被害者の言い分の裏付けとなる資料等探索」等を行います。
2.被告人弁護
被疑者が公判請求を受けて、刑事裁判を受けることとなった場合(「被疑者」から「被告人」に地位が変わります)、裁判に備えての弁護活動を行います。「検察官側が裁判に証拠として提出する資料の確認」、「刑事裁判の判決に向けての被告人との協議」を行い、「被告人が、裁判の対象となっている罪を認めている場合」
①被害者との示談や被害弁償の交渉
②情状証人の準備、その他、被告人に有利な情状に関する資料準備等を行い、刑事裁判の判決において、執行猶予や刑期短縮等獲得を目指します。他方で、「被告人が、裁判の対象となっている罪を認めていない場合、または、責任能力等を争う場合」、検察官側の主張立証内容の吟味と対策検討、被告人の言い分を確認して、その裏付となる資料等探索等を行い、刑事裁判での抗戦に備えます。
なお、被告人となった段階でも、勾留が続く場合、裁判所が算定する保釈金の支払(寄託)を条件として身柄解放を受ける保釈制度があり、被告人やその家族等の求めにより、保釈申立を行うことがあります。
3.被害者支援制度
刑事事件では、加害者のみならず、被害者が存在するため、その被害者支援のため弁護士が被害者側の代理人に就任することも可能です。被害者支援制度としては、以下の制度があります。
(1)被害者参加制度
一部の重大犯罪につき被害者または遺族にて、その刑事裁判に参加できる制度です。証人や被告人への質問を行なったり、裁判所が相当とした時に、裁判の対象となる事実に関しての意見(論告)を述べることができます。
※被害者参加制度利用が可能となる犯罪は↓
①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人、傷害、強盗致傷、危険運転致死傷等)
②不同意性交等・不同意わいせつなどの性犯罪
③逮捕及び監禁の罪
④略取、誘拐、人身売買の罪
⑤「②~④」の犯罪行為を含む他の罪
⑥交通事故に関する罪(過失運転致死傷、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱等)
⑦「①~⑤」の未遂罪
(2)損害賠償命令制度
一部の重大犯罪(被害者参加制度と範囲が異なります)につき、刑事裁判で有罪判決がでた後に、被害者が加害者に対して損害賠償を請求する手続を、刑事裁判を担当した裁判官が引き続き取り扱う制度です。通常、犯罪の被害者側が加害者に対して損害賠償請求を行う場合、自ら民事訴訟(後記(3))を提起する等して、また、証拠等を整える等手間や費用負担があるところ、損害賠償命令制度では、「加害行為の事実につき認定済み」、「原則4回の期日内での結論」等、被害者側の利点があります。
※損害賠償命令制度↓
①故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人、傷害、強盗致傷、危険運転致死傷等)
②不同意性交等・不同意わいせつなどの性犯罪
③逮捕及び監禁の罪
④略取、誘拐、人身売買の罪
⑤「②~④」の犯罪行為を含む他の罪
⑥「①~⑤」の未遂罪⇒被害者参加制度と異なり「交通事故等過失犯」は対象となりません。
(3)民事訴訟等不法行為責任追及
被害者または遺族が、加害者に損害賠償を請求する場合、通常は、民事訴訟提起または示談交渉を行うことになります。「一般民事事件」をご参照下さい。
(4)その他
故意の犯罪により被害者が死亡、重傷病、障害発生に至った場合、その被害者や遺族の住所を管轄する警察署へ犯罪被害者等給付金を申請することもあります。同給付金制度は、被害者側が犯罪を誘発したと認められる場合等の不支給、また、前記(2)や(3)等による加害者からの損害賠償等により、支給の全部・一部を除外されることがあります。
4.少年事件
犯罪の加害者が14歳以上20歳未満の少年の場合、成人の被疑者・被告人に対する刑罰を問う刑事裁判ではなく、家庭裁判所の少年審判に付されます。
例外的に
①故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件であり、その罪を犯した少年が16歳以上の場合(原則として検察官送致の事案)
②死刑、拘禁刑に当たる罪の事件について、家庭裁判所の調査や審判の結果、その罪質や情状に照らして、刑事処分相当と判断された場合、一定の例外を除いて、未成年でも通常の刑事裁判に付されることがあります。
少年事件の家庭裁判所での審判は、最後の処分の内容や判断基準、審判手続とそれまでの手続が、成人の刑事裁判手続等が大きく異なります。
5.その他
心神喪失者等医療観察法に基づく医療観察法処遇事件につき、対象者側の付添人を務めたこともあります。
