家事事件

主にあなたの家庭や親族内での紛争に関する事件です。

家事事件の内容としては,婚姻や離婚等夫婦関係に関する事件,親権問題や養子等親子関係に関する事件,法定後見や任意後見契約,相続と遺言等があります。その他,行方不明者や戸籍上の氏名変更等に関する事件等も家事事件として取り扱われます。

上述の家事事件についても「一般民事」のように裁判所での通常訴訟で処理することもありますが,家庭や親族間の紛争であることから関係者のプライバシー保護への配慮や関係者の感情的な対立が激しいという家事事件の特徴があるため,非公開の場で関係者全体の円満な解決点を模索する審判手続や調停手続を利用することが多くあります(事件内容によっては原則として通常訴訟の前に調停手続での解決を要求されるものもあります。)。

1.夫婦関係に関する事件(離婚問題等)

夫婦関係に関する事件で最も多いものは夫婦関係が悪化した時の離婚事件です。
夫婦の一方が他方に対して離婚を求める場合,夫婦双方の合意に基づき離婚届を作成して役所へ提出する協議離婚が一般的です。夫婦間の離婚の合意ができない場合,家庭裁判所での調停離婚,審判離婚,裁判離婚を検討します。

なお,離婚についての裁判所での手続は原則として裁判の前に調停を家庭裁判所で行う必要があります。離婚についての紛争は,実際に離婚するかどうかの他に,夫婦間で形成した財産分与や離婚の結論に至った責任に関する慰謝料,離婚後の子どもの親権の帰属や養育費,年金分割の割合等も争いになります。
協議離婚をするにしても裁判所での手続に及ぶにしても,これらの事項について定めておく必要があります。離婚以外の夫婦関係に関する事件としては,夫婦が別居状態になった時に,生活費等を請求したり(婚姻費用分担請求事件),夫婦関係の改善を求める事件等があります。

事件内容を問わず相手方との交渉や調停手続,裁判について弁護士を代理人とすることが可能です。

2.成年後見制度,任意後見契約

認知症,知的障害及び精神障害等により,判断能力に問題が発生した方がいる場合,その方の財産管理や契約締結等を助力する者の決定を家庭裁判所に求めることができます(成年後見制度)
判断能力が全くない場合から不十分な場合までの程度に応じて,成年後見人,保佐人,補助人が付されます。また,自分自身の判断能力に問題が発生した時に備え,助力者や依頼する事項をあらかじめ指定する任意後見契約という制度もあります。

判断能力に問題が発生すると,不必要な高額商品を売りつけられたり,所持している財産を理由なく取られたりする危険があります。自分自身やご家族について判断能力の心配がある場合,成年後見制度や任意後見契約制度を検討することをお勧めします。なお,その手続遂行を弁護士に委任することができます。

3.相続・遺言

(1)相続

身近な親族が死亡した場合,その財産(遺産)及び負債の相続が始まります。
死亡者に遺言がなければ,法定相続人に対して法定相続分に従った相続が行われます。また,死亡者の遺言が残っていれば,その内容に従うことになります。ただし,遺言の内容が法定相続人の本来の相続分の半分である「遺留分」を侵害する内容であれば,その法定相続人は,遺留分までの遺産の取得を求めることができます。
例えば死亡者に法定相続人である妻と子がいれば,妻は法定相続分2分の1のさらに半分である4分の1が遺留分となります。遺産の具体的な分配は,相続人間で行う遺産分割協議で決定します。しかし,ここで分割方法が整わない場合には,家庭裁判所での遺産分割調停を行います。

(2)遺言

自分自身の財産等につき,死後,法定相続と異なる分配を行いたい時には,遺言を作成します。
遺言は,満15歳以上であれば作成可能であり,通常,自筆証書遺言や公正証書遺言等の形式で作成されます。遺言作成にあたっては,遺言として有効となる条件が遺言の方式ごとに決まっているので注意が必要です。

特に公正証書遺言は確実性に優れる形式ですが,弁護士に作成を委任することをお勧めします。