「寝てないアピールでは全く同情が買えない年齢」の巻」

新年,明けましておめでとうございます。
 こちらのコラムですが,前回が2014年6月8日なので,1年以上過ぎてしまいました。この空白の理由ですが,これまでこのコラムで愚痴とボヤキを延々と続けていた多忙がいよいよシャレにならない状態となっていたためです。
 この間,無理を押して仕事を続けていると,どうしても寄る年波で体力の限界に至り,いつの間にやら寝ていた……というのではなく,仕事をガリガリやっていた最中に突然意識が途切れ知覚を失い,なんだかそのまま眠っていたという不規則性無責任タイムトラベルがありました。いろいろとマズかったのかもしれません。
 ま,今のご時世,忙しいのはウチに限ったことではないので,このコラムをご覧の方には,ぜひともお心安らかな時間が取れますようお祈り致します。

 さて,久々のコラム更新ですが,その理由は,ようやく日刊準備書面の作成や毎月の尋問手続地獄,さらに中身がいささかナンデございます的な依頼群がひと段落して若干時間が空いたことと,ホームページがリニューアルしたことが切っ掛けです。当事務所のホームページについては,事務所顧問のシステムエンジニアに作成及び管理を委託しているのですが,リニューアルを勧められてこれをお願いしたのです。「法律事務所ごときが何でホームページのリニューアルなどわざわざ…」という疑問は,そのうちネタにするとして,本日はひと段落ついたナンデございます的な仕事の内,いわゆる破産管財事件について述べます。
 
 以前,法人の破産事件の見積もりのコラムがありましたが(「弁護士によるダンジョン探索珍道中」の巻をご参照下さい。),特に,会社等法人の破産の場合,その費用が多額になります。その理由は,破産を裁判所に申し立てるため,代理人となる弁護士へ支払う費用に加えて,別途,破産を裁判所に申し立てるにあたり,裁判所へ納める予納金が必要となるためです。この予納金は,裁判所にて取り扱うことになった破産事件につき,①申立内容に問題が無いかの調査・対処,②支払不能となった債務の詳細調査・確定,③破産者の財産保全や換金作業,④換金された破産者の財産につき債権者への配当等を行うための経費となります。そして,これらの事項については,その結果につき裁判所が当否を下していくことになりますが,実際に作業を行うのは,裁判所が任命する破産管財人の弁護士(破産申立てを依頼する弁護士とは別)です。裁判所へ納められた予納金は,破産管財人へ引き渡され,その後,破産管財人が管理する破産者の財産(破産財団)となり,事務遂行の経費,破産管財人の報酬及び債権者への配当等の原資となります。それゆえ,申し立てた破産事件の内容が,複雑になればなるほど,破産管財人の事務が増えることとなり,これに比例して,裁判所から納付を求められる予納金の額も高くなります。
 破産の申立てを受任する際,破産者が法人である場合,また個人の破産であるとしても,その内容に複雑な事情(自営業主の破産である等実質的に法人の破産と同視できる場合,破産者に一定の財産があるため債権者への配当が予測される場合,支払不能となった理由または経緯において債権者を不当に害する事情や破産法上の義務に違反する等いわゆる免責不許可事由がある場合等)があれば,やはり破産管財人が付される事件となることがあり,依頼人に対して,裁判所への予納金納付の必要を説明します。まれに,弁護士費用の不当な吹っかけであると勘違いされる方もおられますので,破産手続の構造をじっくり説明しなければなりません。

 さて,当方が,仕事の山を前にうなったり踊ったりしていると,裁判所から,とある破産事件で破産管財人に就任してもらえませんかというお仕事の依頼が来ます。ここで,その破産事件の内容から,予想される事件の複雑性に見合う予納金が付いてくるのであれば助かるのですが,電話口の向う側の裁判所書記官さんから申し訳なさそうな口調で依頼をいただくことがある訳です。総じて,破産管財人の事務作業は膨大(というよりどう処理すればよいのか予想がつかん)であると思われるが,破産者(というより破産者の代理人弁護士様)が,●●円しか予納金を準備できないと言っているので,この条件で…という具合です。それこそ,取引先の債権者数が多いとか,会社従業員に対する対応が事実上放置に近い等,それは破産者側もこれと対立する側も事情を抱えられていることに同情できる話であったり,既に破産者と第三者間にて訴訟となっているというレベルならまだましで,破産者が債権者に謝罪するどころか逆に挑発してしまったため大激突状態にあるとか,不法投棄の産業廃棄物の山が放置されているとか,破産者の支払不能の訴え自体が何とも怪しく実は背後に真の責任者が隠れていて申立代理人弁護士様まで騙されている(?)とか,電気代を滞納して給電を止められていた冷蔵庫の中に大量の在庫食料商品が残っておりもうすぐ腐るとか,「これは結構なお宝では!」と喜んだ直後になぜか法禁物とお宝が合体状態にあることが分かったりとか……。
 こういった困難事案は,それこそ勉強になるのですが,事件を進めている内に,申立人代理人の弁護士様が受領された申立報酬が分かることがあり,それが予納金のウン倍だったりすると,ストレスもウン倍になります。何とか始末をつけて破産者と会った際,晴れやかな表情の破産者から,「これだけ難しい破産事件をたったの●日で申し立てていただけるということで,さらに,実際の解決を別の弁護士にやっていただけると聞いていましたが,全てそのとおりとなり,申立てをお願いした先生に多額の費用を払った甲斐がありました。」と,当方への感謝の言葉のようであって,よく吟味すると実は全然そうではない明るい言葉を受け,ストレスがどうのというより,大昔遊んでいたゲームの正気度値チェックでサイコロを振らなきゃなくなる次元に至ることもありますが,ま…。

 …個別の事情については,またの機会として,今年はそれなりにコラムを連載したいものです。年始ということもあるので,少しは景気の良い話を。
 ここ数年ですが,やはり不景気のためか,12月の時点で,決算期の収支がどうしようもないという会社の破産の法律相談を受けたり,実際に会社の破産申立てを受任するのが通例であり,また,他方で,会社の破産事件の破産管財人としての業務中というのが当たり前でした。しかし,昨年の12月は,これらの事情につき完全に0とは言えませんが,例年よりも非常に少なくなりました。これも景気が改善しつつある結果であると思いたいのですが,会社経営に尽力されている方や日々の労務に励まれている就労者の方に良い年となりますよう。
 当方ですが,昨年末,仕事を終えて自動車に乗って帰宅する際,「お!あのラジオ局でバイロイト音楽祭の年末特別放送が流れる季節じゃなかったっけ?これはがんばったご褒美かも。」と気づきました。車を発進させる前に,車内ラジオをあのラジオ局にセットすると,モンサルヴァート城の騎士ローエングリンが白鳥の正体を朗々と歌う美しいテノールの終わり部分が自動車内に流れ,その瞬間「ダメじゃん!!」とズッコケました。当然,車を発進させてすぐ終幕…。あまり考えたくなかった帰り時刻を思い知らされたという訳ですが,このネタには,当方が,昨年12月の何日の何時に事務所を出たのかが判明する情報があります。同好の士の方にはクイズということで。まぁ,何にせよ今年もよろしくお願い致します。