「ハリボテ製の大人の階段」の巻(その1)」

先月のコラムで若干手が空いたので「今年はそれなりにコラムを連載すべかー」と言った舌の根も乾かない内から,またスケジュールがナンデゴザイマス的になっております。ま,多忙であるのは何も当方だけではないと落ち着き,函谷関突破といきたいものです。
 
 それにしても,何でこうも毎度毎度柄にも似合わず忙しくしているかというと,当方の職務対象である紛争がそれだけ多くあるからでしょう。万感の思いとともに学校を卒業する未来ある若人たちの姿を見る季節ですが,そのような若人の方に理不尽な事件が訪れないようにと願うのですが,当事務所には,当方とはジェネレーションギャップがっちりな20歳代のイケメンさんや美人さんが来訪されています。そういった若い方と対面して,その若さをあまりうらやましく感じないというのは,当方個人のヒネクレ体質のみならず,若さが大きなメリットとなる世の中になっていない,すなわち,未来に希望を見出しにくくなっているということでしょうか。両者の割合はまぁ放っておくとして…。

 このコラムでも過去に,当方にて高校生相手に出張授業をしたことを掲載しましたが,先生や保護者から,学生さんが世の悪徳の犠牲にさらされるということについて,非常に警戒を強めていることをよく伺います。親身な先生から,「青年が,世の中に出て,こういうことに注意して欲しいということを教えて下さい。」という質問を受けるのですが,それが,出張授業の質疑応答時間残り5分という段階のことであり,大概当方のコントを聞かせて失望させるというパターンばかりですので,このコラムで若人の方々向けの記事も時々連載させていこうと思います。

 ここ最近数年の当方個人の相談・受任傾向ですが,恐喝や詐欺の標的に青少年が狙われるというものに止まらず,これらの犯罪の片棒を担がされ刑務所行きという事案が珍しくなくなってきました。いわゆる暴力団対策法のため,同法により指定暴力団と認定された暴力団による暴力的な利益要求等が厳しく取り締まられるようになりました。この取締りを逃れるため暴力団にて自ら,または,名義借りを駆使していわゆるフロント企業を設立し営利を得たり,また,振込詐欺や闇金融等継続的で巧妙な犯罪を拡大して久しくなりました。

 フロント企業は,外見では普通の会社であっても,その企業活動にあたり,背後の反社会的暴力を表へ出して来ることで,結局,個別の犯罪行為と認定され,また各地方での暴追条例違反とされます。以上の組織的な犯罪の継続にあたり,その先兵役として,判断力に乏しい青少年がターゲットにされるわけです。暴力団関連という極端な事例に限らず,消費者問題(粗悪または不要な商品やサービスの売り付け,適切な商品やサービスであっても暴利を取り立てる等)の対象となるような業者や労働基準法を守らない業者も,やはり手足となる労働力として青少年に触手が伸ばします。
 たとえ株式会社などと看板に名乗っていても,業務内容がおかしい,勤務体系がおかしいという疑問を感じた時ですが,単に被害者にされているのみならず,加害者にされるかもしれません。その懸念を抱いたら,弁護士との法律相談を申し込んでみるのがよいでしょう(専門じゃない等断られたら別の弁護士さんに申し込めばよいです。)。

 中でも闇金融や振り込め詐欺の場合,①背後の統括クラスの者,②遠隔地で被害者に対して電話を掛ける者(架け子),③確実の被害者から金銭を奪取するため被害者と直接接触する者(受け子)で犯罪組織が構成されるわけですが,③が最も逮捕されるリスクが大きく,逆に,犯罪により奪取した金員からの分け前は非常に少ないのが通常です。反対に,①が犯罪により奪取した金員の大部分を接収するのですが,③が逮捕されると真っ先に逃亡できる立場にあります。③の役回りの20代前半の青年が逮捕され,国選弁護となった当方が会いに行くと,その青年の犯罪意識の低さ,受け取った分け前の比率の少なさと被害者が奪われた金額が莫大であることの不均衡という奇妙を毎回味わうことになります。酷い時になると,被害者の方から数百万円ものお金を詐取して分け前を受け取っておきながら,「自分は被害者だ。不当逮捕だ。」と騒いでいる子もいました。
 その後の取調べ,起訴,判決という過程の中で,闇金融や振り込め詐欺の下っ端であっても,判例上,厳罰化傾向となっていることが分かると,完全に手遅れの反省や仲間割れが始まります。そして,青少年という若さや犯罪組織の中では役割が低く,分け前が少ないという情状があるとしても,総被害の大きさから初犯でも短くない実刑を科されるという結果は珍しくありません。
 「上手く当たると結構儲かる。」,「仕事の紹介。」という甘言から始まる闇金融や振り込め詐欺の実働役の勧誘ですが,きっぱり断り,警察に報告するべきでしょう。

 さて,4月も間近となりました。進学,進級の皆様には,暖かな陽気を存分に楽しまれて下さい。受験が上手くいかず志半ば,また,当初の希望とは別の進路を歩まれる方には,その辛さを正面から受け止められ,力とされますよう。若い内の失敗や恥は,逃げずに受け入れれば,自分の器量をより大きくする糧となり,また,今まで見えなかった物が見えるようになる契機になりますよ。